散文



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1  最後の審判
僕の向かいの席に腰掛けて友人が世界の終わりについて喋っている。           
何やら一週間後に最後の審判が来て全世界は神によって終わらされるらしい。      ついては、この美しい世界を救うために自分が神を包丁で刺殺するので、その代金と神の間までの交通費として、しめて十万円ほど都合してくれないかと言う。  
季節は夏で、この喫茶店にはクーラーがついていない。扇風機が一台あるだけだ。この暑さだと客足が遠のくのは当然だろう。クーラーをつけろ、あほが。       
そんな事をぼんやりと考えている僕に友人は真剣に聞いているのかと苛立った口調で訊ねる。「聞いてるわけねぇだろ馬鹿。ついに本格的にイカレちまったのか?」そんな簡単な返事をするのも面倒な僕は黙って煙草をふかし続ける。
                
昔の夏はこうじゃなかった。子供の頃はもっと世界が輝いて見えてたんだ。あの世界が滅びてしまっているのなら最後の審判でも何でも来ればいい。           
 
もう聞こえないフィルターの奥で友人が喋り続けている。                  僕は薄く笑って煙草を勧める。
昔のアメリカ俳優のような感じの良い笑顔で。    
彼は煙草を吸わないのだけれど。 





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